「スプーンをいつも左手で持つ」
「クレヨンも左手。もしかして左利き?」
そんな姿を見ると、「もう利き手は決まったの?」「右手も使わせたほうがいい?」と気になることがありますよね。
先に結論からいうと、子どもの利き手は「○歳になったら決まる」と、ひとつの年齢ではっきり区切れるものではありません。
乳児期から手の好みが見える子もいますが、幼児期は右手と左手を行き来することもあります。成長とともに、いろいろな動作で使う手が少しずつ一貫していきます。
・小さいうちは左手を使っていても、すぐに左利きと決めなくてOK
・2〜4歳ごろは手の好みが見え始める時期
・4〜6歳ごろになると、明確な好みが見られる子が増える
・親が右手・左手を決めるより、子どもが自然に選ぶ手を観察する
・かなり早い時期から片方の手をほとんど使わない場合は、利き手とは別の視点で相談してよい
この記事では、子どもの利き手はいつ分かるのか、家庭ではどう見ればいいのか、左手を使っていたら右手に直したほうがいいのかまで、できるだけ分かりやすく紹介します。
内容の根拠となる研究論文や専門機関の資料もあわせて紹介しています。「どうしてそう言えるの?」と気になった方は、ぜひ参考資料も読んでみてください。

子どもの利き手はいつ決まる?
「結局、何歳で決まるの?」
ここが一番気になるところですが、実は「○歳で確定する」とひとつの年齢に決めることはできません。
乳児期から手の使い方に偏りが見られる子もいます。
6〜24か月の子どもを繰り返し観察した縦断研究では、乳児期から比較的安定した手の好みを示す子がいる一方で、乳児期には明確な好みがなく、成長してから右または左への好みが現れた子も確認されています。[1]
つまり、
「赤ちゃんが左手でおもちゃを取った=左利き確定」
というわけではありません。
一方、小児作業療法の資料では、手の好みは2〜4歳ごろから発達し、4〜6歳ごろには明確な好みが通常みられるとされています。[2]
研究レビューでも、子どもの利き手がいつ大人のように安定するかについて完全にひとつの答えがあるわけではなく、調べる動作や評価方法によって違いがあります。[3]
そのため、「左利きのミカタ」では、
利き手はある日突然決まるのではなく、幼児期を通して少しずつはっきりしていくもの
と考えるのが分かりやすいと思います。
年齢別|利き手はどう変わっていく?
年齢ごとの大まかな目安を見てみましょう。
ただし、ここで紹介する年齢はあくまで目安です。
「3歳なのに決まっていないから遅い」などと考える必要はありません。
0〜1歳ごろ
おもちゃを取るときなどに、片方の手をよく使う子はいます。
実際、乳児期から比較的安定した手の好みを示す子がいることも研究されています。[1]
ただし、この時期の一場面だけを見て、将来の利き手を決めることはできません。
今日は左手、別の日には右手ということもあります。
まずは、
「左手をよく使うな」
くらいの気持ちで見ておけば十分です。
1〜2歳ごろ
スプーン、おもちゃ、積み木、クレヨンなど、手を使う活動がどんどん増えてきます。
その中で、
「この子は左手を使うことが多いかも」
と感じることも増えてきます。
ただ、この時期もまだ、動作によって使う手が違ったり、成長の途中で傾向が変わったりすることがあります。
2〜4歳ごろ
このころになると、手の好みが少しずつ見えやすくなってきます。
一方で、右手と左手を入れ替えること自体は珍しいことではありません。
小児作業療法の資料でも、2〜4歳ごろは手の好みが発達していく時期とされています。[2]
「昨日は右手だったのに、今日は左手」
となっても、それだけで心配する必要はありません。
4〜6歳ごろ
描く、切る、食べる、歯を磨くなど、いろいろな活動で同じ手を選ぶ傾向が分かりやすくなってくる時期です。
小児作業療法では、4〜6歳ごろに明確な手の好みが通常みられることが、ひとつの目安とされています。[2]
ただし、大切なのは誕生日ではありません。
「何歳になったか」より、「いろいろな活動でどちらの手を自然に選んでいるか」を見てあげましょう。
左手をよく使う=左利き確定ではない
「今日も左手」
「昨日も左手」
そんな日が続くと、親から見ると「もう左利きだな」と感じるかもしれません。
でも、幼い子どもの手の使い方は、物が置かれている位置や姿勢にも影響されます。
たとえば右側にクレヨンが置かれていれば右手、左側にスプーンが置かれていれば左手。
単純に「近いほうの手」で取っている場合もあります。
また、利き手は鉛筆を持つ手だけで判断するものでもありません。
食べるときは左手。
ボールは右手。
歯磨きは左手。
このように、活動によって使う手が違うこともあります。
だからこそ、一度の動作だけで判断するより、いろいろな活動を時間をかけて見ることが大切です。
家庭でできる「利き手の見分け方」
特別な検査をしなくても、普段の生活の中で観察できます。
たとえば、
- クレヨンや鉛筆で描く
- スプーンやフォークを使う
- 歯ブラシを持つ
- ハサミで切る
- ボールを投げる
- 小さな物をつまむ
- ふたを開ける
などです。
ここで、ちょっとしたコツがあります。
道具を子どもの「正面」に置いてみる
最初から右側や左側へ道具を置くと、単純に近いほうの手で取る可能性があります。
そこで、クレヨンやスプーンなどを子どもの体の正面・中央付近に置いてみます。
どちらの手で自然に取るでしょうか。
NHSの小児作業療法資料でも、おもちゃや道具を子どもの正面に置き、自分で使う手を選べるようにする方法が紹介されています。[2]
同資料では、まだ手が定まっていない子について、
“do not choose or force them to use one hand”
と案内しています。[2]
つまり、大人が使う手を選んだり、片方の手を強制したりしないということです。
一日だけで判定する必要もありません。
いろいろな活動を何日か見て、
「細かいことをするときは、左手を自然に選ぶことが多いな」
というように、少し長い目で見ていきましょう。
左利きかも。右手に直したほうがいい?
左手をよく使うようになると、
「右手に持ち替えさせたほうがいいのかな?」
と考える親御さんもいると思います。
少なくとも、利き手がまだ定まっていない子どもに対して、親が右手を選んで固定する必要はありません。
先ほど紹介したNHSの小児作業療法資料でも、子どもが片方の手を好んでいない段階で、大人が使用する手を選んだり強制したりしないよう案内されています。[2]
まずは、
「右でも左でも、本人が使いやすいほうを自然に使える」
状態にしておくことが大切です。
そして左利きだった場合に考えたいのは、左利きを右利きにすることより、左手で使いやすい環境をつくること。
たとえばハサミ。
左利き用と右利き用では、握り方だけでなく刃の重なり方などにも違いがあります。
学校では、座る位置によって隣の子と肘がぶつかりやすいこともあります。
こうした困りごとの中には、「左利きそのもの」が原因というより、右利きを前提に作られた道具や環境との相性から起こるものがあります。
このテーマについては、こちらの記事で詳しく紹介します。
関連記事:子どもの左利きは直したほうがいい?親が知っておきたい考え方
左利きの人はどれくらいいる?
左利きは少数派ですが、ものすごく珍しいわけではありません。
2020年に発表された大規模なメタ解析では、左利きの割合は定義によって9.3〜18.1%と幅があり、研究者らは全体としての最良推定値を10.6%と報告しています。[4]
ざっくり言えば、10人に1人くらいです。
ただし、「左利き」をどう判定するかは研究によって違います。
文字を書く手だけを見るのか。
複数の動作を見るのか。
両方の手を使う人をどう分類するのか。
こうした違いによって割合は変わるため、「世界中どこでも必ず10.6%」という意味ではありません。
それでも、左利きが決して極端に珍しいものではないことは分かります。
左利きは遺伝する?
「お父さんが左利きだから、この子も左利き?」
こんな疑問もありますよね。
遺伝的な要因は関係しています。
ただし、
「親が左利きなら子どもも左利きになる」
という単純な仕組みではありません。
2025年に発表された利き手の遺伝学に関するレビューでは、利き手の遺伝率は一貫して約25%と推定されており、大規模な遺伝研究では複数の遺伝的要因との関連が報告されています。[5]
つまり、
遺伝も関係している。でも、遺伝だけですべてが決まるわけではない。
という理解が近いです。
「左利きになる遺伝子がひとつあって、それを受け継げば左利きになる」というほど単純ではありません。
ひとつだけ注意したい「とても早い時期から片手ばかり」の場合
ここは、「左利きか右利きか」とは少し別の話です。
赤ちゃんのかなり早い時期から、
一方の手ばかり使って、もう一方の手をほとんど使わない
という場合には、「利き手が早く決まったんだ」と自己判断せず、乳幼児健診や小児科などで相談してよいサインです。
NICE(英国国立医療技術評価機構)のガイドラインでは、1歳未満でみられる早期の手の左右差・手の好みを、追加の評価につなげる発達上の懸念のひとつとして挙げています。[6]
ただし、ここは誤解しないでください。
「早く利き手が見えた=病気」という意味ではありません。
見るべきなのは、
「片方をほとんど使わない」
「左右の動きに明らかな差がある」
など、利き手以外の様子も含めた左右差です。
気になる場合は、左利きかどうかを家庭で判定しようとするより、普段の手の動きを乳幼児健診や小児科で相談してみてください。
よくある質問
2歳でいつも左手を使います。左利きですか?
左利きの傾向が現れている可能性はありますが、2歳の時点だけで確定とは言えません。
2〜4歳ごろは手の好みが発達していく時期で、右手と左手を替えることもあります。[2]
無理に右手へ持ち替えさせず、自然な使い方を見ていきましょう。
3歳で右手と左手を両方使います。大丈夫?
幼児期には、活動によって使う手が違うことがあります。
道具を体の中央に置いて、描く・食べる・切るなど、いろいろな活動でどちらの手を自然に選ぶか観察してみましょう。[2]
4歳なのに利き手がはっきりしません
4〜6歳ごろに明確な手の好みが通常みられるという資料がありますが、個人差があります。[2]
年齢だけを見るのではなく、日常生活で困っていないか、左右の手を十分に使えているかも一緒に見てください。
心配なことがあれば、乳幼児健診、小児科、作業療法士などへ相談できます。
左利きは珍しいですか?
大規模メタ解析による全体の推定値は約10.6%です。[4]
少数派ではありますが、極端に珍しいものではありません。
左利きは親から遺伝しますか?
遺伝的な要因は関係していますが、単純な遺伝ではありません。
2025年のレビューでは遺伝率は約25%とされ、複数の遺伝的要因が関係していると考えられています。[5]
まとめ|急いで決めず、「自然に選ぶ手」を見ていこう
子どもの利き手は、ある日突然決まるというより、成長する中で少しずつ一貫していきます。
乳児期から手の好みが見える子もいれば、幼児期になってはっきりしてくる子もいます。
2〜4歳ごろは手を替えることもあり、4〜6歳ごろに明確な手の好みが通常みられるというのが、ひとつの目安です。[2]
だから、親ができるのは、右か左かを急いで決めることではありません。
道具を真ん中に置く。
いろいろな遊びや生活動作を経験させる。
本人が自然に選ぶ手を見守る。
そして左利きだったなら、左手で「できた!」を増やせる環境を整えていく。
「左利きのミカタ」は、そんな子どもたちと家族のために、左利きの困りごとや道具選び、家庭や学校でできる工夫を紹介していきます。
次に読む
→ 子どもの左利きは直したほうがいい?親が知っておきたい考え方
→ 左利きの子どもが困りやすいこと15選|家庭・学校・外出先
参考文献・資料
[1] Nelson EL, Campbell JM, Michel GF. Unimanual to Bimanual: Tracking the Development of Handedness from 6 to 24 Months. Infant Behavior and Development. 2013;36(2):181–188.
論文全文(PubMed Central)
[2] Warrington and Halton Teaching Hospitals NHS Foundation Trust. Encouraging Hand Dominance Activities. Occupational Therapy Service for Children and Young People.
NHS資料
[3] Scharoun SM, Bryden PJ. Hand preference, performance abilities, and hand selection in children. Frontiers in Psychology. 2014;5:82.
論文全文(Frontiers)
[4] Papadatou-Pastou M, et al. Human handedness: A meta-analysis. Psychological Bulletin. 2020;146(6):481–524.
PubMed掲載情報
[5] Schmitz J, et al. Genetics of human handedness: microtubules and beyond. Trends in Genetics. 2025;41(6):497–505.
PubMed掲載情報
[6] NICE. Cerebral palsy in under 25s: assessment and management — Clinical and developmental manifestations of cerebral palsy.
NICEガイドライン(NCBI Bookshelf)



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